オフィス3〇〇『私の恋人beyond』バージョンアップして再演決定!

オフィス3〇〇『私の恋人beyond』

「私の恋人」は反戦と平和への熱望がテーマになっています。初演時から三年経ち、その間コロナの蔓延、ロシア政府のウクライナへの侵攻とますます平和がおびやかされる状況になってしまいました。この舞台の再演の意味がより濃く深くなっています。
本作は上田岳弘さんの小説「私の恋人」から想を得て、八割がたは私の創作です。
東北の震災で受けた傷と断捨離の意味を問うシーン、満州開拓の際に受けた日本人のアイデンティティー崩壊や日本の引きこもり青年が外人部隊、つまり傭兵として志願するといったグロテスクな欲望のシーン。これらは全く原作にはないシーンです。原作ファンの方も驚く展開を楽しんでいただけると思います。
また小日向文世の縦横無尽な怪演、のんの唯一無二の純真でしたたかな演技。私の年齢を超えた挑戦も見ものです。
以下は初演時のパンフレットに書きました私の文章です。

「混在する正義とエロチシズム」
渡辺えり
小説「私の恋人」は何もない脳内の闇の中から一人の理想の恋人を作り上げ、「平和」と「正義」の象徴のような“私の恋人”に支えられ生き続けていく男の話と言っても良いだろうが、いない人物に命を吹き込み、生きた人を作り上げ、その虜になるというストーリーはまさに演劇そのもの。演劇の魅力の虜になってしまった私たちそのものなのである。
これを生の舞台として表現できればと強く思った。
小日向文世さんは昔からの同志のような演劇の仲間である。ゆるぎない信頼関係は、ゼロから夢を作る作業の大変さを共有してきた時代そのものをバックにしているからである。のんちゃんは8年前から一緒に何か作ろうと話し続けてきた気の合う友人である。二人とも複雑な役を悩みながらも楽しそうに演じてくれている。私も大変なのについ大笑いしてしまう。
4回ものオーディションを受けてくれた天使の方たちも嬉々として頼もしい。スタッフの皆さんも本当に手のかかる大変な作業をやってくださり、本当に感謝です。
お客様も楽しんで観てくだされば幸いです。故郷の皆様そしてお世話になっている各県の皆様にお会いできるのがとても楽しみです。
考えてみれば、友人のお誕生会で発表する台本を書くようになってから56年くらいになる。中学高校でも書いたり演出したりを続けてきて64歳の今、改めて振り返るとあまり作風が変わっていない気がして呆れてしまう。
高村光太郎に心酔した父の影響で絵画や音楽に子どものころから親しんできた。ボッスやブリユーゲルの絵画のような風刺の効いた猥雑さ。マグリットやポール・デルボーの絵のような胸を締め付けられる孤独の描写。ゴッホやピカソのリアルを超越した色彩に惹かれるのだ。
「いろいろな角度から見える真実をそれぞれの立場から同時に描いて、それを見る人の立場からいかようにも解釈していただく」というのが私が生み出したと思っている手法だが、絵画の世界では昔から一枚の絵に収まっている手法でもある。見る者が絵画の中から自由に想像して好きなように捉えて楽しむように、私の作る舞台も好きなように観ていただき、主人公をも探していただきたい。観客自体が舞台の内容を自由に作り続ける楽しみもある。
上田岳弘さんの作品を読んでいつも落ち着くのは、そんな私の演劇の手法に似た部分を感じてほっとするからなのかもしれない。
上田さんの作品にはいつも今を生きる人間の孤独と苦しみがあり、どうしようもない、どうにもならないかもしれない社会の矛盾に対して抵抗しようとする人の心の中心部分、の、根っこのような種のような物が根底にある。
そこにどうしようもなく私は惹かれるのだ。
ぎっしり詰まった社会風刺と残酷で優しい人類愛。世の中を大きく捉えたかと思うと、瞬時に顕微鏡で見たような、異常に細かい描写に変化するタッチも、油絵と線描が混在しているようで好きなのだ。
昨年の『肉の海』は上田さんの「塔と重力」から発想を得て、一人の女性を30人の役者が演じたが、今回は30の役を三人の役者で演じる。
一人の人間の記憶が古来からの無数の意識の重なりであり、全宇宙の人類の脳が一つの大きな海となって空間に溶けて行く感覚。無数の悲しみも苦しみも一つに溶けあい、ならされていく感覚。みんなが一つになるという真の意味での平等へ向かう感覚。
そして実在しない架空の理想のエロチシズムを追い求めるという一種の切ないユーモア。
上田さんの作品の中のイメージと、私が40年間作品を通して問い続けてきた、テーマを重ね合わせ、新しい冒険に挑戦しました。
今後もさまざまな冒険を続けたいと願っています。
今回、そんな無謀な冒険を共にして下さった皆様、その冒険に力を貸して下さった皆様に心から感謝です。

オフィス3〇〇『私の恋人beyond』
撮影:横田敦史
オフィス3〇〇『私の恋人beyond』
撮影:市川唯人

 

<公演概要>

オフィス3〇〇『私の恋人beyond』

オフィス3〇〇『私の恋人beyond』

[会場]
本多劇場
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目10-15

[公演スケジュール]
2022年6月30日(木)~2022年7月10日(日)
6/30(木)19:00
7/1(金)14:00/19:00
7/2(土)14:00/19:00
7/3(日)14:00
7/4(月)14:00/19:00
7/5(火)休演日
7/6(水)14:00/19:00
7/7(木)14:00
7/8(金)14:00/19:00
7/9(土)14:00/19:00
7/10(日)14:00
その他全8都市9公演 7月31日まで
(愛知・青森・岩手・北海道5か所)

[チケット]
チケット料金(全席指定・税込価格)
S席8,000円
A席4,000円

チケット発売開始
先行発売 4月1日10時~4月10日0時
一般発売 4月16日10時~

チケット購入方法
ネット予約:http://confetti-web.com/beyond
電話予約: 0120-240-540 ※通話料無料(受付時間 平日10:00~18:00※オペレーター対応)

[出演]
渡辺えり のん 小日向文世
松井夢 坂梨磨弥 関根麻帆 山田美波

演奏
三枝伸太郎

[スタッフ]
原作:上田岳弘『私の恋人』(新潮社)芥川賞受賞作家
美術:長田佳代子
音楽:三枝伸太郎
照明:宮野和夫
音響 :藤森直樹(SoundBusters)
ヘアメイク:馮啓孝
歌唱指導:深沢敦
振付:松井夢
衣装:優花製作/原田夏おる/河合美奈子
オブジェ製作:原田夏おる
演出助手:坂本聖子
舞台監督:榎太郎
スタンドイン:里仲景
宣伝美術:norimori
編集:今井浩一
舞台写真/宣伝映像編集:市川唯人
ツアーマネージャー:村尾則章(トップシーン)
制作:三國谷花
票券:吉乃ルナ
当日運営:宮野風紗音
制作協力:常盤美妃/渋井千佳子/及川晴日

[URL]
公演公式HP:http://office300.co.jp/watashinokoibitobeyond.html

Tokyo Now Author