リポート授賞式

松坂桃李、広瀬すず、横浜流星らが登壇!「TAMA映画賞授賞式」が4年ぶりにパルテノン多摩 大ホールに帰ってきた

11月26日(土)、第14回TAMA映画賞授賞式がパルテノン多摩 大ホールで開催され、横浜流星、森井勇佑監督、片山慎三監督、伊東蒼、河合優実、小林啓一監督、宮本信子・狩山俊輔監督、松坂桃李、佐藤二朗、広瀬すず、倍賞千恵子、吉野耕平監督、深田晃司監督(※受賞順)らが出席した。


開会宣言では竹内昇委員長より、今年はパルテノン多摩大規模改修を終えて授賞式を4年ぶりに同会場で迎えることができるようになり、その間、会場を貸していただいた府中の森芸術劇場、府中市のみなさま、中央大学 多摩キャンパスに感謝の意を表した。

第14回TAMA映画賞授賞式 ©Tokyo Now
(後列左から)牧田和久 財団理事、竹内昇 委員長、森井勇佑監督、久保和明プロデューサー、小林啓一監督、狩山俊輔監督、早川千絵監督、片山慎三監督、阿部裕行 多摩市長、古谷真美
(前列左から)吉野耕平監督、伊東蒼、広瀬すず、松坂桃李、倍賞千恵子、佐藤二朗、宮本信子、河合優実、深田晃司監督

 

【最優秀新進男優賞】
横浜流星(『流浪の月』『アキラとあきら』『嘘喰い』『あなたの番です 劇場版』『DIVOC-12』)

横浜流星 ©Tokyo Now

横浜流星は『流浪の月』において、恋人の心が離れたと悟った姿に心の闇の姿が伝わり俳優としての底しれぬスケールを感じさせたことが評価され受賞に至りました。横浜は「自分が好きな原作『流浪の月』の映画化に携わることができたこと、その中で大きな挑戦ができた。とても大切な作品なので、このような素敵な賞をいただけて非常に嬉しく思います」と受賞した喜びを語った。

亮役について「更紗(広瀬すず)と文(松坂桃李)に影響を与えないといけないし、見ている人に不快感、嫌悪感を与えなければいけない役で本当に挑戦的な役でした。撮影中は毎回悩みながらも監督を信じて亮として生きて、なんとか乗り越えられた気がします」と胸の内を明かすと続けて「幸せなシーンは最初の冒頭のみで、あとは辛いシーンしかなくて、亮はどうしようもない人間ですけど更紗を本気で愛しているんです。でも、不器用なやつでどんどん心の距離が離れてしまう。心の怒り、悲しみというものを自分の中で大事に作っていこうと思っていました。そして、監督・キャスト・スタッフのみなさまが亮という人間を引き出してくれ、より人間らしい亮になった」と周囲への感謝の気持ちを口にした。

さらに映画公開後の反響について「撮影が終わって一年後に映画が公開すると周りの反響が大きくて、たくさんの方にこの作品が届いていることを実感しました。観た方々が揃って『凄かった』『嫌いになった』などの言葉をくださり、それって役者冥利に尽きるなぁと思って自分の中では嬉しい言葉でした」と自信をのぞかせた。

そして今後の目標を聞かれると、「僕がやるべきことは、ひとつひとつ目の前にあることをやり、みなさまの心に残る作品を届けられるように頑張っていきたいです。来年は『ヴィレッジ』『春に散る』の二作品が控えており、どちらも挑戦的な作品になっているので、たくさんの方に届けばいいな思います」とコメントを残し、横浜はスケジュールの都合により会場を後にした。

なお、もう一人の最優秀新進男優賞は磯村勇斗が受賞。久保和明プロデューサーが代理でトロフィーを受け取った。久保プロデューサーからは、磯村が受賞したことを知ったときに「これは僕一人だけの賞ではなくて、全てのキャスト・スタッフのみんなの力でいただいた」と言っていたことが会場にも届けられた。

 

【最優秀新進女優賞】
伊東蒼(『さがす』『恋は光』『MIRRORLIAR FILMS Season4』)

伊東蒼 ©Tokyo Now

伊東蒼は『さがす』において、孤独と不安に苛まれながら、思慮深さや健気さを失わず、果敢に父の真実を探し求める姿が観客の心を強く掴んだことを評価されました。受賞した伊東は「このような素敵な賞を大好きな作品でいただくことができてすごく嬉しいです。受賞できたのは、スタッフ・キャスト・いつも支えてくださる事務所のみなさん、家族、友人のおかげだと思っています。これからも一つ一つの作品や役を大切にして周りの方への感謝を忘れずに楽しんで頑張っていきます」と嬉しさを言葉にした。

大阪出身の伊東が大阪の下町で暮らす娘・楓を演じたことについて「本格的に関西弁でお芝居をしたのが初めてだったので、すごく台本を読んでいるときから楓ちゃんを身近に感じることができ、大阪の街並みで撮影するのは楽しかったです」と微笑んだ。また、東京で撮影するときはホテルから現場に行くことが多く「自分の家から現場に行ったり、学校に行ってから現場に行ったりすることが初めてだったので新鮮でした」とコメント。今後、演じてみたい役はアクションという伊東は「戦隊モノを見ると周りの人を私が守りたくなっちゃうのでそういう妄想をしています。この前、アクションをするシーンがあったのですが、動きを覚えるのでいっぱいいっぱいだったので普段からトレーニングしたいな」とはにかんだ。

最後に「今は学生ということもあって、学業もやりながらお芝居もしているので、まずはしっかりと高校を卒業して引き続きお芝居も頑張っていきたい」と今後の抱負を語った。

 

【最優秀新進女優賞】
河合優実(『PLAN 75』『愛なのに』『ちょっと思い出しただけ』『女子高生に殺されたい』『百花』『冬薔薇』ほか)

河合優実 ©Tokyo Now

河合優実は物語を動かす印象的な役作りを行い、洞察力、想像力に裏打ちされたメッセージを込めた視線が観客の心を射抜いたことが評価された。河合は「今年は、たくさんの映画に運良く出会えた年で『PLAN 75』という作品で倍賞さんにいただいた言葉を思い出しています。私がオールアップするときに『頑張っていれば誰かが見ていてくれるからね』と言ってハグしてくれて、何か映画祭で賞をいただくということは目の前のことを楽しんでまっすぐ取り組んだ結果、観てくださったみなさんの思いがこういう賞という形で私のもとに届くということなのかなと考えております」と受賞した喜びを噛みしめた。

『PLAN 75』では高齢者をサポートするコールセンタースタッフという珍しい役柄に「コールセンターのスタッフを演じるときがくるとは思わなかったんですけど、コールセンターでアルバイトをしたことがあります」と打ち明け会場をざわつかせた。続けて、表情で言葉にしてはいけない演技が印象的でしたの見解に「現場で早川監督が繊細に演出してくださって、現場で起きていることをすごくピュアに受け取り変えていける方だったので、一緒に細かく調整していきました」とコメント。

そして今年7作品に出演したことについて「本当にたくさんの出会いに恵まれて、それぞれの作品に心と体を尽くして頑張っている俳優・スタッフのみなさんがたくさんいることをこの場で伝えたい。それに巡り合えている縁にすごく感謝しています」そして「この先、出会えるみなさんのことを楽しみにしています。みんなで良い未来に向かっていきたいという思いがあるので、まだ見ぬ価値あるものを生み出すためにすごく心から楽しみにしています」とメッセージを送った。

 

【最優秀男優賞】
松坂桃李(『流浪の月』)

松坂桃李 ©Tokyo Now

『流浪の月』佐伯文という人間が抱え続けた繊細な感情の機微をこぼすことなく演じることで長い年月をかけた愛の灯火を静かに表現したことが評価された。登壇した松坂は挨拶後に突然「舞台袖で佐藤二朗さんから『俺がしゃべりやすいように場をやわらかくしろ』」と言われたことを暴露し、会場からは笑いが漏れた。「そのために何をしゃべったらいいのかわからなくなってしまったんですけど・・・」と混乱している状況を説明した。その後もあたふたしていると舞台袖に待機している佐藤から「ばらすなよ、桃李」の掛け声で会場からは盛大な拍手が巻き起こった。

その後、松阪は一笑すると気を取り直して「チャップリンは『あなたのベストアクトは』質問に対して「(The) next one(次の作品)」だと答えていたんです。それがすごく良いコメントだなと思っていて、僕もいつかそういうことを言えるようになったらいいなと思い頑張ってきました。まだチャップリンには遠く及ばないけれども、『流浪の月』に関しては間違いなく僕の今のベストだと思っています」と胸を張った。そして、「今回、自分の中で全てを出し切ろう、僕自身の挑戦でもありましたし、勝負の作品で受賞することができて、とても嬉しいです」熱い思い語った。

佐伯文を演じるにあたり「クラインフェルター症候群という第二次性徴期がこない珍しい症状の役で、本人もわかってほしいけどわかってほしくない、その難しい自分の体や心の様子をお芝居で表現することがいままでなくて、すごくハードルが高いと思っていました。そのため作品が終わるまでは李監督と何度もリハーサルを重ねて役に向き合いました」と振り返った。そして、ほっそりとした見た目の話に移ると「役柄上、体のラインを絞ったほうがいいかもねと李監督と話し合い、そこから食生活を改善したりして現場に挑みました。クランクアップした日には李監督と二人でご飯を食べに行き、胃袋が小さくなってしまっていたのでお粥から頼んだのですが、そのお粥が本当に美味しくて、今でも忘れられない」とエピソードを披露した

そして今後取り組んでみたい作品の話になると「兄弟ものをそんなにやったことがないので、少し年が離れた兄弟でもいいのでアットホームなハートフルコメディチックな兄弟作品があれば呼んでいただきたい」と力強くアピール。最後に「またTAMA映画賞に呼んでもらえるような作品に出続けられるよう日々精進していきたいと思います」と今後の抱負を述べた。

 

【最優秀女優賞】
広瀬すず(『流浪の月』)

広瀬すず ©Tokyo Now

過去の傷を背負い生きてきた『流浪の月』更紗が愛する人との再開によって抑圧から開放され、はつらつと息づく様は静かな美しさを放っていたことが評価された。受賞した広瀬は「このような素敵な賞をいただけて本当にまっすぐ更紗と向き合いながら一生懸命生きてきてよかったと思います。自分の中ではすごい苦しい撮影でした。今こうして多くの方に届いていたんだと思うと踏ん張ってよかった。そして多くの方たちに支えていただいたので、少しでも恩返しができたら良いなと思っています」と感謝した。

更紗を演じて「普通に生きてきた中で自分の心が一番弱っていました。何を見ても苦しかった。ずっと混乱していました」と撮影時の苦悩を口にした。続けて、李相日監督と組んだ作品『怒り』『流浪の月』について聞かれると「すごいツラい役が多いなとは思います。でも、すごくやりがいがあるというか、お芝居を通してこんなに贅沢な現場はないだろうなと思います」また、「二十歳過ぎたこのタイミングで李監督の映画に参加できてよかったなと思います」と感謝の言葉を述べた。

広瀬すず & 松坂桃李 ©Tokyo Now
(左から)広瀬すず、松坂桃李

ここで『流浪の月』で共演する松坂桃李がトークに参加し、松阪が話し始めると広瀬が笑い出した。
松坂「なんで笑ってるの?」
広瀬「私ずっと二朗さんの後にしゃべるのめっちゃ嫌だったんですよ(笑)」
松坂「(笑)わかるよー」
広瀬「めちゃくちゃ嫌だなと思って、ホントつまらないことしか言えなくてごめんなさいと思って」
佐藤「そんなことないよ」
広瀬「桃李さんが来てホッとしました(笑)」

一旦話がそれたが、ここから李監督の撮影現場エピソードに戻った。松坂はまず「入念なディスカッションをして、リハーサルを何度か重ねた上で、撮影部・照明部などのスタッフが揃い監督がテストを行う現場が初めてだったことを明かし、それがすごく新鮮でこんな濃厚な現場を最初から経験していた広瀬すずはすごい」と隣にいる広瀬を褒め称えた。そんな広瀬は「『怒り』のときには初日カメラを回してもらえずワンカットも撮れなかったことを思い出し、今回は初日に撮れたと言うだけで安心して、文という自分の中で支えになっている人、桃李さんがいて心強かったです」と振り返った。

最後に広瀬は「多くの方に届く素敵な作品に参加できたらいいな、ものづくりってやっぱり楽しいなと改めて思った現場でもあったので、いろんな映画に参加できるようにがんばりたいなと思っています」と今後の抱負を語った。

 

第14回TAMA映画賞
( https://www.tamaeiga.org/2022/award/ )

最優秀作品賞[本年度最も活力溢れる作品の監督及びスタッフ・キャストに対し表彰]
  • 『LOVE LIFE』(深田晃司監督、及びスタッフ・キャスト一同)
  • 『ハケンアニメ!』(吉野耕平監督、及びスタッフ・キャスト一同)
特別賞[映画ファンを魅了した事象に対し表彰]
  • 芦田愛菜・宮本信子、及びスタッフ・キャスト一同(『メタモルフォーゼの縁側』)
  • 小林啓一監督、及びスタッフ・キャスト一同(『恋は光』)
最優秀男優賞[本年度最も心に残った男優を表彰]
  • 佐藤二朗(『さがす』『truth~姦しき弔いの果て~』『バイオレンスアクション』)
  • 松坂桃李(『流浪の月』)
最優秀女優賞[本年度最も心に残った女優を表彰]
  • 倍賞千恵子(『PLAN 75』)
  • 広瀬すず(『流浪の月』)
最優秀新進監督賞[本年度最も飛躍した監督、もしくは顕著な活躍をした新人監督を表彰]
  • 片山慎三監督(『さがす』)
  • 森井勇佑監督(『こちらあみ子』)
最優秀新進男優賞[本年度最も飛躍した男優、もしくは顕著な活躍をした新人男優を表彰]
  • 磯村勇斗(『ビリーバーズ』『PLAN 75』『異動辞令は音楽隊!』『さかなのこ』『前科者』『彼女が好きなものは』ほか)
  • 横浜流星(『流浪の月』『アキラとあきら』『嘘喰い』『あなたの番です 劇場版』『DIVOC-12』
最優秀新進女優賞[本年度最も飛躍した女優、もしくは顕著な活躍をした 新人女優を表彰]
  • 河合優実(『PLAN 75』『愛なのに』『ちょっと思い出しただけ』『女子高生に殺されたい』『百花』『冬薔薇』ほか)
  • 伊東蒼(『さがす』『恋は光』『MIRRORLIAR FILMS Season4』)
TAMA映画賞

明日への元気を与えてくれる・夢をみせてくれる活力溢れる<いきのいい>作品・監督・俳優を、映画ファンの立場から感謝をこめて表彰します。

選考対象
2021年10月から2022年9月に一般劇場で公開された作品及び監督・キャスト・スタッフ

選考方法
TAMA映画フォーラム実行委員(市民ボランティア)の合議により選考