早稲田大学歴史館『早稲田大学百五十年史』編纂事業関連展 シリーズ3. 戦後80年展――「学問の独立」を問いなおす

戦後80年を迎えた現在、実際に戦争を経験した世代が少なくなり、若い世代にとって、戦争はますます「遠い出来事」になりつつあります。自校史の授業で戦時下の状況を学んだ学生たちからは、「もし自分がそのような状況に置かれたら、何も考えられなくなると思う」「現在の平和に感謝したい」といった声が聞かれ、戦争をどこか現実感の薄いものとして受け止める傾向も見られます。しかし近年、ウクライナやガザ地区で繰り返されている悲劇は、戦争が過去の出来事ではなく、今なお私たちの世界で起きていることを強く示しています。

80年前の戦争において、早稲田大学は大きな人的・物的な被害にあった一方、戦争に協力せざるを得なかった面も少なからず存在しました。「学問の独立」を建学の精神とする本学は、学問の府として戦争や権力とどのように向きあうべきかを常に問い続け、かつての経験や教訓を次の世代に語り継ぐ責務があります。

早稲田大学歴史館、およびその前身の大学史資料センターでは、2013年、2015年、2023年にも戦争に関する展覧会を開催してきました。これまでは「学徒出陣」を中心に、戦中・敗戦までの内容を主として取り上げてきました。しかし、戦争は「8月15日」をもって終わったわけではありません。戦争の影響はその後も続き、大学の「戦後史」を規定した側面もあります。加えて、現在、早稲田大学歴史館では、『早稲田大学百五十年史』第二巻（戦後編）の編纂が行われており、資料の収集や執筆が進められています。

本展では、年史事業の成果を活用しつつ、「学問の独立」の理念および実態が、戦時下においてどのように失われ、また戦後においてどのように再提起されたのかを辿っていきます。