死と再生のイニシエーション

YUGEN Galleryでは、2024年11月8日(金)よりアーティスト・馬場敬一の個展を開催します。

かつては虐げられる民族、性的搾取の対象となる女性など、社会的弱者の悲哀や諦めを傷として表現してきた画家・馬場敬一。今回紹介する最新シリーズ「RESIN 死と再生」は、自分とドクロと女神にモチーフを絞り、極めてナラティブな神話的世界を描いています。

積層ダンボールに描いた絵にナイフで傷を入れ「絵を壊した」後、ダンボールを樹脂で硬化させる独自の半立体表現により、荘厳な宗教性を讃える作品群を創り出しています。

馬場敬一は、1974年東京都出身。16歳から本格的に美術を学び、20歳の頃に旅したインドで「（絵を）描くことこそが自身の人生に必要不可欠な精神活動」であると感じ、画家になることを決意。以来、精力的に活動しています。

痛みを刻み、傷というマチエールを残した画面を再構築し、さらに硬質な質感を与える制作プロセスにおいては、一度死んだ魂を再生する通過儀礼が示唆されます。これは、3年前に自身が経験したうつをきっかけに生まれたもの。そこから自身が感じた苦しみ、痛みを作品を通して吐露することで魂を回復してきたといいます。
「（作品は）無宗教の私が自己救済を目的に描く、オリジナルの神話的世界です。傷や痛みの先に在る生命の姿が、私の眼前に力強く現れる事を願い祈るように制作しています」